タネが危ない その二

今日は 野口勲さんの『タネが危ない』という本から

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日本経済新聞出版社 2011

 

「へえ~」 と思ったところを紹介しますが

 

図とか表とか写真とかは 勝手に使うわけにはいかないので

ひたすら文字だけになり、きちんと伝えられる自信はありません。

 

なので、興味を持たれた方は ぜひ原本を読んでくださいね

 

 

まずは、ミトコンドリア

 

私たちの細胞のひとつひとつには 数千のミトコンドリアがいて

その重量は 体重の10パーセントを占めているそうです。

この無数のミトコンドリアが 

融合・分裂しながらエネルギーを出すことによって

私たちは生きていられるし、私たちの免疫機能

ミトコンドリアによって支えられているんですって

 

・・おもしろいのは このミトコンドリアの遺伝子が

母親からだけ 代々伝えられているんです

父親のミトコンドリアは 母親の胎内で死滅してしまうので

細胞レベルで言うと 生き物はみな母系なんですね

 

で、F1 種というのは・・

 

F1 種というのは、ミトコンドリア異常がある作物だそうです

で、こんな野菜を人類は食べ続けていて大丈夫なのか?と。

 

昔からずっと、世界中の農民は 

自家採種したタネを使って 作物を育てていました。

よくできたタネを売る タネ屋が出現するのは18世紀になるころで

それから いろいろ掛け合わせて

品種改良を進めるという時代があったのです。

 

ところが、どうしても生育にばらつきが出てしまうので

人工的に おしべを全部取ってしまい、これ!という品種の

おしべで受粉させて 一代雑種を作るということが

大正時代以後にはじまります

 

戦後になっても 防虫網を張ったハウスの中で

何十人ものパートの人たちが、毎日毎日 おしべを取ったり

花粉付けをしたり ということが行われていたそうです

 

その後、CO₂濃度を100倍に高めてハウスを密閉し

ヘモグロビンを持たないミツバチを放す技術が開発されています

 

とにかく、植物のおしべを全部手作業で摘み取るというのは

とても大変だったのですが

なんと、1925年にアメリカで おしべが機能不全になっている

異常なタマネギが見つかったんですね

これなら いちいちおしべを引っこ抜く必要がありません

 

こうして タマネギやトウモロコシを始め いろいろな野菜で

「雄性不稔」の株が探し出され

F1 種全盛の時代になっていきました

 

怖いのは、誰かが発見した たった一つの異常株から

その後の品種が作られていくという点です

 

たとえば、いま世界中で栽培されているテンサイは

50年以上前に アメリカのオーエンという人が発見した

たった一株のミトコンドリア変異株の子孫なんです。

 

しかも、こうした変異株を発見するのは 

偶然によるところが大きいので

モンサントやバイエルやデュポンやシンジェンタといった

種苗会社は 遺伝子組み換えをしたくてしょうがないんですね

 

なんといっても 自分が作った除草剤や農薬に強い品種を作れば

セットで売り出せるのですから。

 

手塚治虫さんに『人間ども集まれ!』という作品があります

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COM名作コミックス増刊 1973

 

精子に異常がある 天下太平を親として

たくさんの 同じ形質を持つ無性人間を作り

単なる道具として 売っていく物語なのですけど

まるで F1を念頭に置いて描いたみたいです

 

結末は2種類あるらしく

漫画サンデーの連載の方では 共存する明るい未来で終わるらしいです

そのあとに出版されたこの本では 人類は終わりへと向かっていくので

手塚治虫は F1に 懐疑的な未来を見ていたのかもしれませんね