妹背山婦女庭訓

シアトルに行くとき、「夜は孫娘がなかなか寝ないので相手できないから、

読む本をたくさん持ってきたほうがいいよー」

と娘に言われ、前から読みたいと思っていた

大島真寿美さんの『妹背山婦女庭訓 魂結び 渦』や

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2019 文藝春秋 文庫版は2021

高田郁さんの新刊、住野よるさんなどを持って行ったのですが

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結局むこうでは その時間にブログを書いていたし、

行き帰りの飛行機では ひたすら映画を見ていたので

結局 読めたのは帰ってからの自主隔離中です。

大島真寿美さんの『妹背山婦女庭訓 波模様 結』も

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2021 文藝春秋

昨日やっと 読み終わりました。

 

浄瑠璃については 近松門左衛門が有名で、

それ以前は古浄瑠璃ということや 大衆芸能の流れの中で

奈良絵本などの題材にもなり 絵本の源流につながっていること

歌舞伎が生まれ 浮世絵にも大きな影響を与えたこと程度の知識しかなく、

妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)

名前しか知りませんでした。

まして、その作者が近松半二だということや その遺作

『伊賀越道中双六』1783 に近松加作という共作者がいることなど

この作品を読むまで知りもしませんでした

 

歴史小説は 限られた史実をつなぎ合わせて

想像力で補っていく部分が大きいです。

その良し悪しで 作品の質が決まると言っても過言ではないのですが

この『妹背山婦女庭訓 魂結び 渦』は どこまでがフィクションで

どこまでが史実なのかわからないくらい よく書けています

2019年の第161回直木賞を受賞したのも 納得です。

 

岡本綺堂という人が 1928年に『近松半二の死』という作品を発表していますが

近松加作は 祇園町遊郭の娘となっていて

それよりは 大島さんの解釈の方がずっと現実味があります。

というか、実際そうだったのだろうと思ってしまうだけの筆力があるんですね。

 

この作品を書くきっかけは 2015年の平成中村座で観た『妹背山婦女庭訓』で

七之助が演じた「お三輪」に出会ったせいらしいです。

(「お三輪」は『渦』のバックボーンになっています)

 

『妹背山婦女庭訓』は 今でも歌舞伎や文楽として演じられているみたいなので

一度見に行ってみたいなあ と思わせるだけの面白さが

この本にはありました。

 

「渦」の方は 近松半二に焦点を当て、

「結」の方は 近松半二の周辺の人々の話になります。

その最初は「耳鳥斎」で『絵本水や空』というヘタウマの役者絵を

八文字屋に旅費を出してもらって江戸まで出かけ、描いたという話が載っています

「渦」の方にも出てきた 「松へ」という人物です。

ふうん と楽しく読んだのですが

国会図書館でためしに『絵本水や空』を調べてみたら

本当に出てきました。

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しかも、本当にヘタウマな役者絵です。

この絵のために 江戸までの旅費や滞在費を出した

京都の八文字屋という版元もすごいですね。

あっ、でも 江戸に行ったというのもフィクションなのかも・・