一昨日、国分寺からタクシーで来てくださったお客さまは
絵本の勉強会をされているそうです。
いま、やっているのはバーニンガム・・と言っていたような気がします
遺作?の 『パイロットマイルズ』の話になり、
ちょうど先日 常連の方から紹介されて読んでいたおかげで
なんとか話についていけました。
ジョン・バーニンガム&ヘレン・オクセンバリ―絵
ビル・サラマン文 谷川俊太郎訳 ビーエル出版 2021.9
その前は「いせひでこ」さんだったのでしょうか
画家としての伊勢さんの生き方を熱く語られていました。
『ルリユールおじさん』は
講談社 2011
たしか どこかで原画を見たような気がします
バーバラ・クーニーも大好きだそうです。
日本の絵本の歴史をさかのぼると
起源は平安時代の絵巻物や鳥獣戯画などに求めることができます。
ただ、本として形を成していくのは
御伽草子系の絵巻物に触発された奈良絵本からです。
この奈良絵本は 一冊一冊が手作りのため、
ほんの一握りの人たちだけが享受していました。
やがて 江戸時代前期になると、版木で大量に刷られるようになり
もっと広範な人たちが手に取れるようになります
つまり、印刷出版業が17世紀に初めて出現するのです。
ただ 当初は版木一枚の単色刷りでした。
色がないと寂しいと考えた京都の人が
手作業で丹を筆でさっと塗ったのが丹緑本で、
そのうち緑や黄、藍色なども使われ
あっという間に江戸や大阪にも広まります。
この印刷出版文化は 版木職人だけでなく
挿絵で食べていける職人も産みだし、16世紀の菱川師宣のように
その後の浮世絵師の土台になっていくんですね。
で、最近 西條奈加さんの『ごんだくれ』を読みました
光文社 2015
18世紀、円山応挙門下の長沢 芦雪がモデルと思われる吉村胡雪こと彦太郎と、
曽我簫白がモデルと思われる深山箏白こと豊蔵のダブル主人公で、
奇想の絵師とされた ふたりの絡み合いがすごいです。
先日読んだ 澤田瞳子さんの『若冲』も 本当にあったことではないかと
思わせてしまう筆力にびっくりしましたが
こちらは 江戸の狩野派に対して、京都の絵師たちというものが
若冲や蕪村も含めてこんなふうに存在していたんだな
ということがわかるだけでなく、長沢 芦雪や曽我簫白を
もっときちんと見てみたいと思わせるほどの中身でした。
なんといっても、歴史上は彦太郎より18年早く亡くなっている豊蔵が
同時代を生きているのです。たしかに簫白が生きていたら
きっと こうだったんだろうなと違和感がありません。
『恋しぐれ』も読んでみましたが
葉室 麟 文芸春秋2011
こちらは 文章との相性が悪いのか
どんどん苦痛になってきて、途中で止めました。
この人は、いっぱい本を出しているし、
最後まで読めばきっと面白いのかも・・と思います。
でも、限られた時間なので 好きなものを読みたいと
代わりに澤田瞳子さんの『火定』(かじょう)を読んだら
これがまた すごい本でした。
PHP研究所 2017
こちらは ずっと昔 奈良時代737年の話で、
施薬院が舞台です。
長屋王を殺して栄華を誇った藤原4兄弟が
みんな罹患して死んでしまい 日本の歴史が変わったとされる
あの天然痘の話なのですが
物語中に藤原4兄弟はほとんど出てきません。
1300年前に疫病と向き合った
奈良の人々の姿が 浮かび上がってくる小説でした。